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2018/11/22 作成

YS-11 一般公開

西武新宿線 航空公園駅前に展示されているYS-11の一般公開レポートです。

航空公園駅前に展示されているYS-11の一般公開(機内の公開イベント)

今日は、11月14日、埼玉県民の日です。埼玉県の西武新宿線 航空公園駅前に展示されているYS-11A-500R(JA8732)は、毎年県民の日を含めて年に数回ほど機内を一般公開しています。今回は、このYS-11の機体を紹介します。

YS-11の後部ハッチに横付けされた簡易タラップを登る一般公開イベントの参加者

この機体(JA8732)は、エアーニッポン(全日空系列)で運用していました。今でも当時の塗装のまま保存されています。一般公開では、通常は使用しない後部側のハッチから機内に入ります。また、機体に簡易タラップを横付けしています。

YS-11の一般公開イベントの女性スタッフさん

タラップを登って機内に入ります。スタッフさんは、整備員のようなつなぎを着ていました。

YS-11の後部ハッチ(ドア)

YS-11の後部ハッチです。このYS-11(JA8732)は、1969年製なので約50年前の古い機体ですが、ドアの形状は今の機体とそれほど大きく変わらないですね。もちろん、年季は入っています。

YS-11の後部ハッチ(ドア)から入った機内の様子

後部ハッチは、通常は搭乗口として使用しないため、前方ハッチよりひとまわり小さく作られています。頭をぶつけないように、かがんで機内に入ります。

航空公園駅前に展示されているYS-11の機内の座席(キャビン)

YS-11のキャビン(客室)です。機内は、運行当時の状態のまま保存されていました。かなり保存状態は良いです。座席配置は、片側 2席の16列で計64席です。

YS-11の昭和を感じさせる古い座席とテーブル

さすがに座席は古いですね。昭和を感じる懐かしい座席です。テーブルも今の機体と比べると、かなり古いタイプのものですね。

YS-11の昭和を感じさせる古い座席と肘掛

特に古さを感じるのが、この肘掛です。鉄道の車両もそうですが、昭和の機体には肘掛の先に開閉式の小さな灰皿が付いていました。リクライニング用のスイッチもボタン式ではなく、レバー式でした。

YS-11の座席の上の天井にある空調(冷気のみ)、読書灯、CA呼び出しスイッチ

座席の上の天井にある空調(冷気のみ)、読書灯、CA呼び出しスイッチです。説明書きも「スチュワデス」と書かれています(左の画像をクリックして拡大すると文字が読み取れます)。

YS-11の機体の最後尾にある貨物用ハッチとCA用の簡易座席

機体の最後尾にある貨物用ハッチとCA用の簡易座席です。これも古さを感じますね。

YS-11のギャレー

YS-11のギャレーです。かなり狭いです。この狭いスペースで機内サービスの準備をするのは、相当たいへんだと思います。現在は、整備用の機材が詰め込まれていました。

YS-11のギャレーの壁にあるキャビン空調・照明操作パネル

ギャレーの壁にあるキャビン空調・照明操作パネルです。スイッチやノズル、動作ランプの形状が古いですね。年代を感じさせます。

YS-11の機内の非常口が開いた状態の座席

一般公開時には、非常口も開けてくれました。なかなかサービス精神が旺盛です。ここが開いている状態は、なかなか見られませんよ。この非常口のある席に座ると、離陸前にCAさんが一言説明に来るんですよね。今でもあるのかな?

YS-11のプロペラとターボプロップエンジン

非常口から見たYS-11のプロペラとターボプロップエンジンです。エンジンカウルの形状が古いですね。今のエンジンカウルは、エンジンの形と同じ円筒状に作られた1枚構造ですが、この当時のエンジンカウルは複数枚のカウルがつぎはぎ状態になっています。突起物も多いです。

YS-11の非常口から見たプロペラと機体側面

非常口から機体前方を撮影してみました。鉄道とは異なり飛行機は窓が開かないので、このアングルで見た機体とプロペラの絵は、なかなか珍しいと思います。

YS-11の機体最前列の座席

機体最前列の座席です。今で言えばプレミアムエコノミーですね。前方に席が無いので圧迫感がありませんが、それにしても殺風景です。窓際で箱状に飛び出ている部分は、前方ハッチのアーム収納部かな?

YS-11のキャビンからコックピットの間の通路

さて、お待ちかねのコックピットです。成田空港の隣にある 航空科学博物館 に展示されているYS-11はコックピットの前にアクリル板があるのですが、このYS-11は遮蔽物がない為、じっくりとコックピットを観察することができます。

YS-11のコックピット(操縦席と様々な計器類と操縦桿)

YS-11のコックピットです。航空科学博物館にある試作第1号機(JA8611)とほぼ同じ形状のコックピットですが、良く見ると差異があります。その辺りも含めて見て行きましょう。

YS-11のコックピットのフロントパネルに設置されている古い計器類

まずは、フロントパネルです。グラスコックピット化する前の機体でも、機長席と副機長席でほぼ同じ計器配置ですが、YS-11はかなり差がありますね。機長席の上段左から順に速度計(Speed Indicator)、姿勢指示計(ADI:Attitude Director Indicator)、気圧高度計(Barometric Altimeter) 、中段がラジオ磁気指示計(RMI:Radio Magnetic Indicator)、水平位置指示計(HSI:Horizontal Situation Indicator)、傾斜旋回計(Bank and Turn Indicator)、下段が時計(Clock)、姿勢指示計(ADI:Attitude Director Indicator)です。この計器配置は、現行機とほぼ同一です。

YS-11のコックピットのセンターパネルに設置されている動力関係の計器類

続いてセンターパネルです。ここに動力関係の計器類が配置されているのも、現行機と同じです。上段左から順に排気温度計(EGT:Exhaust Gas Temperature)、油温計(Oil Temperature Gauge)、油圧計(Oil Pressure Gauge)、中段が回転数計(RPM:Revolution Per Minute)、水メタノール圧計(Water Methanol Check Pressure)、水温計(Water Temperature Gauge)、ランディングギアハンドル、下段が燃料流量計(FF:Fuel Flow)、フラップ角度計(Flap Angle Gauge)です。左上には、高度別の限界速度、VA(設計運動速度:Maneuvering Speed)、VFE(最大フラップ下げ速度:Maximum Flap Extended Speed)、VLE(最大ギア下げ速度:Maximum Landing Gear Extended Speed)、VLO(最大ギア操作速度:Maximum Landing Gear Operating Speed)が明記されています。

YS-11のエンジン火災消化スイッチ

現行機は、コックピット正面にオートパイロット用のモードコントロールパネルが設置されていますが、YS-11にはありません。代わりに、エンジン火災消化スイッチが設置されていました。その上は、無線関係の機器だと思いますが、詳細は不明です。さらに上にある円形の機器は、方位計ですね。

YS-11のコックピットの無線機、スタビライザートリムホイール、スピードブレーキ、スロットルレバー、フラップハンドル、ラダートリム、燃料制御装置

次に、座席間にある機器です。中央はレーダ、左右は無線機、その手前のレバー類は、左からスタビライザートリムホイール、スピードブレーキ、スロットルレバー、フラップハンドルです。手前は、ラダートリム、燃料制御装置など。

YS-11のコックピットのオーバーヘッドパネル(調光器、除氷装置、電力制御装置、燃料制御装置、イグニッションスイッチ)

続いてオーバーヘッドパネルです。YS-11は、サーキットブレーカパネルが天井に無い分、頭上はシンプルです。左から調光器(Dimmer)、除氷装置(Deicing System)、電力制御装置、燃料制御装置、イグニッションスイッチです。

YS-11のコックピットにあるサーキットブレーカーパネル

サーキットブレーカーパネルです。一般的な航空機は、天井のオーバーヘッドパネルの隣に設置されていますが、YS-11の場合は、副操縦席の後方に位置しています。画像では下半分の五段しか写っていませんが、さらに上に五段あります。

YS-11のタラップ

一通り機内を見学したところでタラップを降ります。ちなみに、このタラップもYS-11の特徴的なところなのですが、詳細は後述します。

YS-11の一般公開時間が終わり撤収作業をするスタッフさん

今日の一般公開は15:00で終了です。自分が最後の見学者だったため、機外へ出るとすぐにスタッフさんの撤収作業が始まりました。この後、最後の見せ場があります。

上空を通過するYS-11

撤収作業中にちょうど航空公園の上空を入間基地所属の YS-11FC(飛行点検機) が通過しました。このYS-11が今でも現役で飛行しているところは凄いですね。

YS-11の搭乗用タラップ

YS-11の前方ハッチ付近で待機していました。しばらくすると、スタッフさんから「始めまーす!」と合図がありました。

YS-11の収納式のタラップ(エアステア)が折りたたまれていくところ

スタッフさんが機体底面から伸ばしたリモートスイッチを操作するとYS-11のタラップが自動的に折りたたまれていきます。これがYS-11の特徴である折りたたみ式のタラップ(エアステア)です。現代の航空機では、なかなか見られないレアな光景です。

自動的に折りたたまれて機内に収納されるYS-11のタラップ(エアステア)

折りたたまれたタラップは、徐々に機内に引き込まれていきます。タラップが完全に機内に収納されると、スライド式のハッチが自動的に閉まります。

YS-11の一般公開のスタッフさん(所沢航空発祥記念館の職員)

撤収作業が完了したところでスタッフさんが閉会式を実施していました。ちなみに、駅前に展示されているこのYS-11は、隣の航空記念公園の中にある所沢航空発祥記念館が管理しており、スタッフさんも記念館から来ています。

一般公開が終了したYS-11(JA8732)

以上、航空記念公園 YS-11一般公開のレポートでした。もし、機会があれば、是非一度見てください。一般公開は、埼玉県民の日だけではなく、不定期に年数回ほど開催しています。


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